地方競馬の枠順は内枠有利?68万頭のデータでは逆でした

競馬予想における「内枠有利」は、最もよく知られた通説のひとつです。距離ロスが少ない内枠の馬を、それだけで少し高く評価している方も多いのではないでしょうか。
しかし、地方競馬の直近5年・約68万頭の出走データを集計すると、結果は通説と逆でした。勝率も回収率も、内枠より外枠の方が高くなっています。
このページでは、地方競馬14場の枠順の傾向を、競馬場別・距離別・馬場状態別に検証します。さらに同じ集計方法で算出した中央競馬のダートとも比較し、「内枠有利」の通説がどこまで通用するのかを確認していきましょう。
- 集計期間
- 2021年6月~2026年6月 計5年間
- 対象レース
- 地方競馬14場の平地全レース(ばんえい競馬・5頭立て未満は除外) 66,994レース・679,484頭
- 比較用として、同期間の中央競馬ダートレース 8,331レース・118,026頭
- 枠の定義
- 馬番を出走頭数で3等分し、内寄り3分の1を「内枠」、真ん中を「中枠」、外寄り3分の1を「外枠」として集計
- 回収率計算方法
- 単勝・複勝とも100円均等買い
※地方競馬のレースはほぼ全てダートですが、盛岡競馬場の芝レースを少数含みます。
※本記事は過去データの傾向の集計であり、原因を証明するものではありません。
※過去のレースに対する成績であり、将来のレースにおいて同様のパフォーマンスを保証するものではありません。
「地方競馬は内枠有利」は本当か?

まずは全レースを内・中・外の3つに分けた基本成績から見ていきましょう。
次のグラフは、内枠・中枠・外枠それぞれの勝率です。
枠の位置別の勝率

グラフから、内枠9.3%・中枠9.6%・外枠10.7%と、外に行くほど勝率が上がっていることがわかります。「内枠有利」どころか、勝率は外枠優勢です。
なお、一般論として「勝率が高い=馬券的な妙味がある(儲かる)」ではありません。そこで回収率も確認してみましょう。
枠の位置別の単勝回収率

単勝回収率も内枠67.9%に対して外枠71.9%と、勝率と同じ並びであることが読み取れます。オッズ(馬券購入者の評価)が外枠の有利を織り込み切れていない傾向です。
※回収率の内外差は、勝率の差ほど確度の高いものではありません。傾向としてご覧ください。
詳しい数値は次の表のとおりです。
| 位置 | 出走頭数 | 勝率 | 3着内率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 内枠 | 246,836 | 9.3% | 28.6% | 67.9% | 69.1% |
| 中枠 | 205,858 | 9.6% | 29.3% | 68.5% | 70.4% |
| 外枠 | 226,790 | 10.7% | 31.0% | 71.9% | 71.6% |
分析結果の傾向
- 勝率は内枠9.3%に対して外枠10.7%と、外枠が明確に上回っています
- 単勝回収率・複勝回収率も、外枠が最も高くなっています
- 内枠から外枠へ向かって、成績はほぼ一直線に良くなる傾向にあります
内枠と外枠の勝率差は、統計的な誤差の幅を大きく超えています。
ここで重要なのは、枠順は抽選で決まるという点です。強い馬が外枠に集まる理由は基本的にないため、この差は馬の能力差ではなく「ポジションそのものの有利不利」と考えられます。
もちろん、外枠でも回収率は100%に届いていません。外枠を機械的に買い続ければ儲かる、という話ではない点にはご注意ください。
最も割を食っているのは「最内枠」

- 12頭立てで6.4%にとどまる馬番1の勝率
- 頭数を限定しない集計でも約1.3倍の差
- ラチ沿いの深い砂と砂被りという背景
内・中・外の比較で見えにくいのが、最内(馬番1)の極端な不利です。
頭数によって馬番の意味が変わるため、まずは12頭立てのレースに絞って、馬番別の勝率を見てみましょう。
次のグラフは、12頭立てに限定した馬番別の勝率です。
馬番別の勝率(12頭立て)

12頭立てで枠の有利不利がなければ、どの馬番も勝率は約8.3%(1÷12)になるはずです。
しかしグラフからは、馬番1だけが6.4%と大きく沈み、そこから外へ向かうにつれておおむね勝率が上がっていく並びで、大外の馬番12は9.7%に達していることがわかります。
頭数を限定しない集計でも、最内(馬番1)の勝率9.0%に対して大外は11.7%と、約1.3倍の差があります。
最内の不利は、ラチ(コースの内外を仕切る柵)沿いの砂が深くなりやすいことや、スタート直後に前の馬の砂を被りやすいことによるものと考えられます。
14場のどこにも「内枠有利」と言い切れる競馬場はない

「小回りの競馬場なら内枠有利なのでは」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで14場それぞれについて、内枠と外枠の勝率の比(内÷外)を計算してみました。数値が1.0より小さいほど外枠有利、1.0より大きければ内枠有利です。
次のグラフは、14場を内÷外の勝率比が大きい順(内枠寄りの順)に並べたものです。
競馬場別の内外バイアス

グラフから、青い棒(外枠有利)が14場のうち10場を占め、灰色の4場も1.0前後にとどまっていることが読み取れます。
| 競馬場 | 内÷外(勝率比) |
|---|---|
| 川崎 | 1.08 |
| 金沢 | 1.03 |
| 大井 | 1.01 |
| 盛岡 | 1.01 |
| 浦和 | 0.95 |
| 佐賀 | 0.93 |
| 水沢 | 0.92 |
| 高知 | 0.88 |
| 笠松 | 0.82 |
| 園田 | 0.77 |
| 名古屋 | 0.74 |
| 門別 | 0.74 |
| 船橋 | 0.67 |
| 姫路 | 0.64 |
分析結果の傾向
- 最も外枠有利が強いのは姫路(0.64)・船橋(0.67)・名古屋と門別(0.74)です
- 川崎・金沢・大井・盛岡は1.0前後で、内外ほぼ互角となっています
- 園田や笠松のような小回りコースでも、はっきりと外枠有利です
※川崎など1.0をわずかに超えている競馬場についても、その差は誤差の範囲に収まっており、「内枠有利」と言い切れる競馬場は1つもありませんでした。
※集計期間中に、名古屋競馬場の弥富への移転(2022年4月)と、船橋競馬場の本馬場リニューアル(2025年3月)がありました。この2場の数値は移転・改修の前後を合わせたもので、名古屋を移転後だけで集計すると内÷外は0.70となります。
※開催数は競馬場によって差があり、開催の少ない競馬場ほど数字の振れは大きくなります。
「小回り=内枠有利」という直感も、データでは裏付けられないという結果です。競馬場ごとの枠順の傾向は、場別シリーズの各記事でさらに詳しく取り上げています。
距離・馬場・年による違い

- 短距離で最も強く出た外枠有利
- 13頭立て以上でほぼ消える内外の差
- 馬場状態を分けても崩れない外枠優勢
- 5年間ほぼ一定の年別推移
条件を変えても傾向が崩れないかを確認しておきましょう。
次のグラフは、距離帯別に内÷外の勝率比を見たものです。
距離帯別の内外バイアス

グラフから、短距離(1300m以下)で外枠有利が最も強く(内÷外0.80)、1400m以上では0.87~0.89とやや緩むものの、どの距離帯でも外枠優勢は変わらないことがわかります。
※短距離では内枠に能力面で見劣りする馬がやや偏る傾向があり、ポジションそのものの有利不利が実際より大きく見えている可能性があります。
頭数別では、13頭立て以上になると内外の差はほとんど見られなくなり、15~16頭立てでは外枠の単勝回収率が全体の水準を下回ります。外枠有利がはっきりしているのは、12頭立て以下のレースです。
馬場状態別では、良馬場から不良馬場まで内÷外は0.82~0.90の狭い範囲に収まりました。「道悪になると内・前有利」といった変化は、枠に関しては見られません。
年別の推移も見ておきましょう。
内外バイアスの年別推移

グラフのとおり、5年間を通じて内÷外は0.86~0.88とほぼ一定です。特定の年の偏りではなく、安定した構造と言えます。
中央競馬のダートでも「外枠有利」だった

この傾向は地方競馬に特有のものなのでしょうか。同じ期間・同じ集計方法で、中央競馬のダートレースを検証してみました。
次のグラフは、内枠と外枠の勝率を地方・中央で並べたものです。
内枠と外枠の勝率(地方vs中央ダート)

グラフから、中央のダートも地方と同じ構図(外枠>内枠)であることがわかります。
| 指標 | 地方競馬 | 中央競馬(ダート) |
|---|---|---|
| 内枠の勝率 | 9.3% | 6.5% |
| 中枠の勝率 | 9.6% | 7.1% |
| 外枠の勝率 | 10.7% | 7.7% |
| 内÷外(勝率比) | 0.86 | 0.84 |
| 大外÷最内(勝率比) | 1.30倍 | 1.34倍 |
| 内枠の単勝回収率 | 67.9% | 67.8% |
| 中枠の単勝回収率 | 68.5% | 73.0% |
| 外枠の単勝回収率 | 71.9% | 71.8% |
分析結果の傾向
- 中央のダートも、地方とほぼ同じ水準で外枠有利となっています
- 最内の不利は、フルゲート16頭が主流の中央でも同じようにはっきり表れています
- 内枠と外枠の単勝回収率の差も、地方・中央でほぼ一致しています
つまり「外枠有利・最内不利」は地方競馬だけの現象ではなく、砂のコースに共通する構造と考えられます。
念のため、人気の影響を除いて確認してみます。次のグラフは、1番人気に限定した内枠と外枠の勝率です。
1番人気に限定した勝率

同じ1番人気でも、地方(内43.2%・外45.6%)と中央ダート(内31.3%・外37.2%)のどちらも外枠が上回っていることがわかります。
続いて回収率です。
1番人気に限定した単勝回収率

回収率でも外枠が上であることが読み取れます。オッズは枠の有利不利を織り込み切れていない傾向がある、と言えるでしょう。
なぜ「内枠有利」と信じられてきたのか
次の図解は、内枠と外枠の「得」と「損」を整理したものです。
内枠と外枠の得と損(コーナー上面の模式図)

内枠が距離ロスの少ないコースを走れること自体は事実です。
しかし砂のコースでは、ラチ沿いの深い砂やスタート直後の砂被りといったコストが、距離ロスの節約分を上回っていると考えられます。
「内枠有利」のイメージは、こうしたコストが小さい芝のレースの感覚を、そのままダートに持ち込んだものと考えられます。
なお、芝のレースだけを取り出した検証は行っていません。
まとめ:枠順の傾向を把握して馬券戦略を組み立てる

本記事の検証結果をまとめます。
- 地方競馬は「内枠有利」ではなく、勝率・回収率とも外枠がやや有利です
- 特に最内(馬番1)は期待される水準を明確に下回り、割引が必要です
- この傾向は距離・馬場・年を通じて安定しており、14場のどこにも「内枠有利」と言い切れる競馬場はありませんでした。中央競馬のダートでも同じです
- 同じ人気でも外枠の方が好成績で、オッズは枠の差を織り込み切れていない傾向にあります
実戦では、最内枠を引いた人気馬の過信は禁物です。一方で、地方競馬では12頭立て以下のレースであれば、大外枠は見た目の印象ほど割り引く必要はありません。
ただし、外枠でも回収率は100%未満です。枠順単独で儲かる材料ではなく、人気馬を評価する際の加点・減点材料のひとつとして活用するのがおすすめです。
なお、今回の集計は枠順だけを見た全体の傾向です。逃げ馬が最内を引いた場合など、脚質との組み合わせまでは踏み込んでいません。
地方競馬のデータ検証
中央競馬
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Contents
競馬初心者に向けた基礎知識の解説から、競馬場ごとの特徴、そして統計学に基づいた回収率を大きく向上させるためのデータを紹介。
さらに独自の競馬AIを自作するためのノウハウについても解説します。

