地方競馬の単勝と複勝の使い分け【5年68万頭×中央比較】

単勝と複勝、どっちを買うか。競馬を始めたばかりの方が最初に迷うポイントです。
「本命は複勝が手堅い」「自信があるなら単勝」といった使い分けはよく語られますが、数字の根拠つきで示されることはほとんどありません。ましてや地方競馬を前提にした検証はほぼ見当たりません。
このページでは、地方競馬5年・約68万頭と中央ダート5年・約11.8万頭を、同じ期間・同じ母集団の条件(複勝が発売される5頭立て以上)で集計し、「どの人気帯・オッズ帯で、単勝と複勝のどちらが相対的に得か」を実測データで確認していきます。
結論から言えば、得な券種は一律には決まりません。本命帯は複勝、10倍前後の中穴は単勝、20倍以上の大穴はどちらも不利、というのが5年分の実測から見えた形です。
- 集計期間
- 2021年6月~2026年6月 計5年間
- 対象レース
- 複勝が発売される5頭立て以上のレースに限定(地方・中央とも同一条件)
- 地方競馬: 14場の平地全レース(ばんえい競馬を除き、複勝が発売される5頭立て以上に限定) 66,994レース・679,484頭
- 中央競馬: ダートのみ 8,331レース・118,026頭
- 回収率計算方法
- 単勝・複勝とも100円均等買い(払戻は公式の払戻データに基づき当サイトが集計)
- 補足
- 「複−単」=複勝回収率−単勝回収率。プラスなら複勝が、マイナスなら単勝が相対的に得
- オッズ帯の集計はレース後に確定するオッズに基づきます(購入時の直前オッズとは多少ずれることがあります)
※地方競馬のレースはほぼ全てダートですが、盛岡競馬場の芝レースを少数含みます。
※本記事は過去データの傾向の集計であり、原因を証明するものではありません。
※過去のレースに対する成績であり、将来のレースにおいて同様のパフォーマンスを保証するものではありません。
次の図解は、本記事で分かる使い分けの早見まとめです。
単勝と複勝の使い分け 早見マップ

複勝とは——地方競馬ならではの注意点

複勝とは、買った馬が3着以内に入れば的中となる馬券です(出走頭数が5~7頭のレースでは2着以内。4頭以下では発売されません)。
的中の間口が広いぶん配当は低く、「的中率を取るか、配当を取るか」が単勝との使い分けの基本になります。
ここで、地方競馬ならではの注意点がひとつあります。
中央競馬(JRA)には「プラス10」という制度があり、払戻が100円(買った金額がそのまま返ってくる「元返し」)になる場合には10円が上乗せされ、100円あたり最低110円の払戻が保証されています(2008年導入。人気が極端に集中した場合の例外はあります)。
一方、地方競馬にはプラス10に相当する制度がありません。断然人気の複勝では、的中しても100円がそのまま返ってくるだけ、ということが制度上起こりえます。
「だから地方の複勝は買えない」と言われることもありますが、それは本当でしょうか。実測で確かめていきます。
人気帯で見る——本命は複勝、中穴は単勝

- 勝率・3着内率も並ぶ人気帯別の一覧
- 1番人気+9.1%・2番人気+5.5%の差
- 4-6番人気で反転する複−単の符号
- 1番人気で地方の方が強く出る複勝側の優位
まず、地方競馬の人気帯別に単勝と複勝の回収率を並べます。
| 人気 | 対象数 | 勝率 | 3着内率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 | 複−単 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1番人気 | 66,996 | 44.3% | 75.7% | 79.4% | 88.5% | +9.1 |
| 2番人気 | 66,996 | 20.7% | 59.7% | 75.7% | 81.2% | +5.5 |
| 3番人気 | 67,003 | 12.4% | 46.8% | 74.0% | 75.9% | +2.0 |
| 4-6番人気 | 200,305 | 5.7% | 27.7% | 73.0% | 69.8% | -3.3 |
| 7-9番人気 | 178,741 | 1.8% | 10.9% | 67.1% | 65.4% | -1.7 |
| 10番人気以下 | 99,443 | 0.6% | 4.0% | 51.9% | 56.7% | +4.8 |
1番人気の複−単は+9.1%、2番人気は+5.5%です。本命サイドでは、複勝の回収率が単勝をはっきり上回っています。
ところが4-6番人気では-3.3%、7-9番人気では-1.7%と符号が反転します。中穴ゾーンでは単勝の方が相対的に得なのです。
つまり「どちらの券種が得か」は一律に決まらず、人気帯で逆転します。
本命の複勝は、3着以内に入る確率に比べればそこまで買われておらず、馬券を買う大勢の評価の癖がここに表れていると考えられます。
次のグラフは、この「複−単」を地方と中央ダートで並べたものです。
人気帯別の複−単(地方vs中央ダート)

中央ダートでも構造は同じで、本命帯はプラス・中穴帯はマイナスです。注目は1番人気で、地方の+9.1%に対して中央は+4.7%です。
1番人気に限れば、複勝側の優位は地方の方が約2倍強く出ています。ただし2番人気は地方と中央がほぼ同じ、3番人気は中央の方が大きく、本命帯の全体に当てはまる差ではありません。
なお10番人気以下の+4.8%は「複勝が得」というより、大穴の単勝回収率(51.9%)が極端に低いことの裏返しです。大穴はどちらの券種でも大きく不利になっています。
一般論として「勝率が高い=馬券的な妙味がある(儲かる)」ではありません。表のとおり、どの人気帯・どの券種も回収率は100%未満です。
オッズ帯で見る——10倍前後は単勝の領域

- 2倍未満で+10%を超える複勝側の差
- 単勝80.2%と複勝75.6%が逆転する帯
- 20倍以上で揃って落ち込む回収率
- 中央ダートでも変わらない帯ごとの形
人気順位よりきめ細かい物差しが、単勝オッズです。
次のグラフは、地方競馬のオッズ帯別に単勝と複勝の回収率を並べたものです。
オッズ帯別の単勝・複勝回収率(地方)

2倍未満の帯では複−単が+10%を超え、複勝の優位が最もはっきり出ます。3.0~4.9倍でも+4.2%と複勝側です。
これが10~19倍の帯になると、単勝80.2%に対して複勝75.6%と逆転します(複−単-4.6%)。中穴ゾーンでは、券種は単勝側が相対的に得という傾向が読み取れます。
そして20倍以上になると、単勝59.9%・複勝60.6%とどちらも大きく落ち込みます。大穴はそもそも券種を選ぶ以前に、全体として買われ過ぎのゾーンと言えます。
| 帯 | 複−単(地方) | 複−単(中央ダート) |
|---|---|---|
| 2倍未満 | +10.3~+10.4 | +8.6~+10.0 |
| 2.0~4.9倍 | +4.2~+8.5 | +3.9~+4.1 |
| 5.0~9.9倍 | -0.9 | +1.4 |
| 10~19倍 | -4.6 | -4.3 |
| 20倍以上 | +0.7 | +2.0 |
「本命帯は複勝・10倍前後は単勝・大穴は両方不利」という構造は、中央ダートでも同じでした。
施行者が違っても同じ形になるのは、馬券を買う大勢の評価の癖が働いているためと考えられます。
※オッズ帯はレース後に確定した値による集計です。5.0~9.9倍の帯は地方(-0.9)と中央(+1.4)で符号が食い違い、20倍以上も複−単はごくわずか(地方+0.7・中央+2.0)です。この2つの帯は、券種の有利不利が「ほぼ互角」とお考えください。
「地方の1番人気は堅い」の理由——オッズで揃えるとほぼ同じ

- 地方と中央ダートの1番人気の勝率差
- 1.4倍以下から4.0倍以上までの勝率の並び
- 地方に多い単勝2倍未満の1番人気
- オッズ構成の違いで説明できる差
ここで、地方と中央の比較でよく話題になる「地方の1番人気は堅い」を掘り下げます。
確かに1番人気の勝率は地方44.3%・中央ダート34.1%と、10%以上の差があります。しかし1番人気を単勝オッズで揃えて比べると、景色が変わります。
1番人気のオッズ別勝率(地方vs中央ダート)

| 1番人気のオッズ | 地方の勝率 | 中央ダートの勝率 |
|---|---|---|
| 1.4倍以下 | 69.4% | 69.3% |
| 1.5~1.9倍 | 47.6% | 46.2% |
| 2.0~2.9倍 | 32.8% | 33.5% |
| 3.0~3.9倍 | 23.0% | 23.9% |
| 4.0倍以上 | 17.0% | 18.0% |
※1.4倍以下と4.0倍以上の帯は中央の該当数が少なく(423頭・511頭)、数字には誤差の幅があります。
同じオッズ帯なら、勝率は地方も中央もほぼ同じです。オッズは、地方でも中央ダートでも通用する共通の物差しになっています。
では44.3%と34.1%の差はどこから来るのか。答えは1番人気の中身です。
1番人気のオッズ構成(地方vs中央ダート)

地方では1番人気の52.6%が、単勝2倍未満の強い支持を集めた馬です。中央ダートでは23.1%しかありません。
逆に3倍以上の「頼りない1番人気」は、地方10.1%・中央32.7%です。
試しに、中央のオッズ構成に地方の勝率カーブを当てはめると33.7%(実際の中央は34.1%)、地方の構成に中央のカーブを当てはめると44.2%(同44.3%)となり、差のほぼ全てがオッズ構成の違いで説明できます。
別記事では、この差の約半分が出走頭数の違いによることを確認しました。
オッズは、頭数や実力差といった条件の違いが最終的に集約される「値段」です。頭数の効き目もオッズに織り込まれるため、二つの分解は矛盾せず、オッズで揃えると差がほぼ消えるのは自然な結果と言えます。
「地方の1番人気は堅い」の理由は、「地方には2倍未満の1番人気が多い」ことでした。1番人気というラベルではなく、オッズを見て判断するのが実測に沿った買い方です。
断然人気の複勝は地方でも手堅いのか——制度差の実測

はじめに触れた制度差に戻ります。「プラス10がない地方の複勝は買えない」は本当でしょうか。
断然人気(1.4倍以下)の1番人気の複勝回収率(地方vs中央ダート)

断然人気(単勝1.4倍以下)の1番人気の複勝回収率は、地方95.5%・中央ダート98.3%です(中央は423頭の集計で誤差の幅があります)。
中央が約3%高いという方向は、最低110円が保証されるプラス10の存在と整合すると考えられます。
一方で、地方の95.5%という数字は、本記事で集計したすべての帯・券種の中でも最も高い部類です。3着内率は91.1%に達します。
「元返しがあるから地方の複勝は買えない」とまでは、データからは言えません。
ただし95.5%も100%未満であることに変わりはなく、機械的に買い続ければ、回収率が100%に届かない分だけ資金は少しずつ目減りしていきます。全体の平均回収率が100%を下回るのは、売上のうち払戻に回らない割合(控除率)があるためです。
あくまで「損しにくい券種の筆頭」という位置付けです。
使い分けの型——3つのゾーンで整理

ここまでの実測を、実践で使える3つのゾーンに整理します。
- 本命ゾーン(単勝オッズ3倍未満)
- 地方では複−単が+8.5~+10.4%で、券種を選ぶなら複勝側です。人気帯で見ても1~3番人気はすべて複勝側(+2.0~+9.1%)です。オッズ3倍未満のどの帯でも、この複勝側の優位は中央より地方の方が大きくなっています
- 中穴ゾーン(10~19倍)
- 複−単がマイナスに反転し、券種を選ぶなら単勝側です。地方・中央に共通の構造です
- 大穴ゾーン(20倍以上)
- 単複とも回収率60%前後まで落ち込みます。券種の選択以前に、長期的には最も分の悪いゾーンです
※間に挟まれた3~10倍は中間帯です。3.0~4.9倍はまだ複勝側(+4.2%)で、5.0~9.9倍まで来るとほぼ互角になります。この範囲では、どちらか一方が明確に有利とは言えません。
「相対的に得」とは、同じオッズ帯・人気帯の馬を買うならどちらの券種の回収率が高いかという比較です。どのゾーンも回収率100%は超えないため、券種の使い分けだけで儲かるわけではありません。
それでも、同じ予想をするなら不利の小さい側の券種を選びましょう。これは今日から機械的に実行できる改善です。
1日単位の収支は運に大きく左右されますが、こうした小さな差は月単位・年単位の収支に効いてきます。
まとめ:単勝と複勝の性格を把握して馬券戦略を組み立てる

本記事の要点をまとめます。
- 券種の得は人気帯・オッズ帯で逆転します。本命帯は複勝(1番人気は地方+9.1%で中央の約2倍)、10倍前後の中穴は単勝、20倍以上の大穴は両方不利です
- 1番人気のオッズ別勝率カーブは地方と中央ダートでほぼ同一でした。「地方の1番人気は堅い」の理由は、単勝2倍未満の1番人気の多さ(52.6% vs 23.1%)です
- 地方にはプラス10(最低110円払戻)に相当する制度がなく複勝の元返しが起こりえますが、断然人気(単勝1.4倍以下)の複勝回収率は95.5%と高い部類で、「地方の複勝は買えない」とまでは言えません
- どの帯・どの券種も回収率100%未満です。使い分けは「損を減らす」ための物差しとしてご活用ください
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