地方競馬の転入馬は本当に強い?初戦勝率20.7%とその後を実測

「中央から来た馬は地方では強い」。地方競馬の予想でよく出てくるセオリーです。
本記事では、中央と地方の両方の公式データを馬単位でつなぎ、直近5年に地方へ転入した馬の成績を実測しました。集計期間と頭数を明示したうえで、「何走目まで強いのか」の推移まで踏み込んで検証します。
結論の要点は3つです。転入馬の初戦は勝率20.7%と地方全体の約2倍で「強い」は本当であること。
その強さは初戦限りではなく2走目まで続くこと。そして、馬券購入者はその強さをすでに織り込んでおり、特に2走目は初戦より買われ過ぎであることです。
- 集計期間
- 2021年6月~2026年6月 計5年間(地方側)
- 対象レース
- 地方競馬14場の平地全レース(ばんえい競馬を除く) 67,076レース・679,804頭(出走取消・競走除外は集計対象外)
- 転入の判定
- 中央・地方の公式データを血統登録番号(全国共通の馬のID)で接続し、「直前走が中央」かつ「当日の所属が地方」かつ「その中央在籍より前に地方出走がない」馬の地方初戦を「初転入の初戦」と判定
- 中央側の出走データは2017年以降(それ以前に中央を離れた馬は判定できません)。地方側の過去出走の確認は2014年以降です
- 回収率計算方法
- 単勝・複勝とも100円均等買い(払戻は公式の払戻データに基づき当サイトが集計)
※本記事は過去データの傾向の集計であり、原因を証明するものではありません。転入馬の成績には「どんな馬が地方に来るか」という選ばれ方の影響も含まれます。
※過去のレースに対する成績であり、将来のレースにおいて同様のパフォーマンスを保証するものではありません。
「転入馬」の数え方には落とし穴がある
「直前のレースが中央」の馬をすべて転入馬と数えると、実は3種類の別物が混ざります。
次の図解は、その3分類です。
「直前走が中央」の3分類

ひとつめは本記事が中心に扱う初転入、つまり中央でキャリアを積み、地方所属へ移籍してきた馬です。
ふたつめは出戻りで、過去に地方での出走歴があり、中央を経て地方へ戻ってきたケースです(中央挑戦帰りなど)。
みっつめが、見落とされがちな交流参戦です。JRA所属のまま地方の交流競走に遠征してきただけの馬で、移籍はしていません。
次のグラフは、3分類それぞれの「地方での直後の1走」の勝率です。
3分類の勝率比較

初転入20.7%・出戻り23.8%に対して、交流参戦は14.0%と明確に別物です。直近5年で「直前走が中央」の地方出走は19,320件ありますが、真の初転入はその65%の12,538件でした。
つまり、この区別をせずに「転入馬」を集計すると、数字が3割以上の混ぜものを含むことになります。本記事では以降、元中央馬のうち初転入にあたる12,538頭に絞って見ていきます。
初転入の初戦は勝率20.7%——地方全体の約2倍

- 地方平均9.9%と並べた勝率・3着内率
- 12,538頭という規模と誤差の幅
- 勝率の高さと単勝回収率のずれ
- 1番人気と7番人気以下で割れる回収率
初転入馬の地方初戦は、勝率20.7%・3着内率45.3%です。地方全体の平均(勝率9.9%・3着内率29.6%)と比べると、勝率で約2倍です。
「転入馬は強い」という通説は、実測でもはっきり支持されます。
集計した12,538頭という規模なので、この20.7%の統計的な誤差幅は20.0~21.4%に収まります。年ごとに見ても20.3~24.2%で安定しており、特定の年の偏りではありません。
中央の低いクラスでも、地方の水準ではすぐ通用する能力を持つ馬が多いことによるものと考えられます。
ただし、ここで一度確認しておきます。「勝率が高い=馬券的な妙味がある(儲かる)」ではありません。
初転入の初戦の人気の中央値は3番人気です。馬券購入者は転入馬を相応に警戒しており、単勝回収率は72.0%と地方全体の69.4%でほぼ同水準です。
「強い」は本当でも「買えば儲かる」にはならない、というのがひとつめの現実です。
人気帯別に見ると、買われ方の癖がもう少し細かく分かります。
転入初戦の人気帯別の単勝回収率

転入初戦の1番人気は勝率48.7%・単勝回収率85.6%と、地方の1番人気全体(44.3%・79.4%)より堅く、回収率も上です。一方、7番人気以下の人気薄は単勝回収率40.0%と大きく割高です。
「転入馬だから一発あるかも」と人気薄に手を出す方が損をしやすい構図と言えます。
強さはいつまで続く?——減衰カーブの実測

- 初戦と2走目でほぼ横ばいの勝率
- 3走目以降の緩やかな下がり方
- 中央出走歴のない馬を下回る11走目以降
- 集計から抜ける馬による顔ぶれの入れ替わり
転入馬のセオリーでよく語られるのが「狙えるのは環境の変わった初戦だけ」という説です。この説を、転入後の走数ごとの勝率で確かめます。
次のグラフは、初転入馬の「転入後N走目」別の勝率です。
転入後の走数別の勝率

意外なことに、勝率は初戦20.7%→2走目21.0%とほぼ横ばいで、「初戦だけ」ではありません。3走目19.1%、4~5走目16.1%と緩やかに下がり、6~10走目でも14.2%と地方平均よりかなり高い水準を保ちます。
一方で、11走目以降は7.4%まで下がり、中央出走歴のない馬(8.7%)をむしろ下回ります。転入から時間が経つと、勝ち上がりによるクラス上昇や加齢で貯金が尽きていくことによるものと考えられます。
また、地方で結果を出した馬の一部は中央へ再挑戦して集計から抜けるため、走数を重ねた区分ほどメンバーの顔ぶれが入れ替わっていく影響も含まれます。
「転入馬は強い」の有効期限はおおむね10走前後まで、と押さえておくとよいでしょう。
「狙いは2戦目」は本当か——回収率は逆を示す

ネット上には「転入初戦は人気しすぎるので、狙いはむしろ2戦目」という説もあります。勝率が2走目まで維持されるのは前章のとおりですが、馬券の観点ではどうでしょうか。
次のグラフは、同じ区分の単勝回収率です。
転入後の走数別の単勝回収率

結果は説と逆でした。単勝回収率は2走目で65.8%まで下がり、初戦の72.0%を6%以上下回ります。
初戦を走った転入馬は「地方で通用する」と見なされ、2走目でオッズが一段と下がりやすいことによるものと考えられます。勝率が維持されていても、オッズの下がり方がそれ以上であれば、回収率は落ちるわけです。
2走目の回収率の落ち込みは、当サイトが以前検証した「休み明けを一度使った叩き2走目は買われ過ぎ」と同じ、買われ方の癖と考えられます。目に見える直近の好調は、地方競馬のオッズでは過大評価されやすいのです。
走る転入馬の見分け方——中央実績とブランク

- 中央16走以上と5走以内で開く初戦勝率
- 中央未勝利組とクラス編入の仕組み
- 4~8か月のブランクで下がる初戦の成績
同じ初転入でも、中央時代のキャリアで成績は変わります。
次のグラフは、中央時代の出走数別に見た転入初戦の勝率です。
中央時代の出走数別の転入初戦勝率

中央16走以上の馬は26.3%、6~15走の馬は24.1%と高い一方、中央で5走以内に地方へ移った馬は16.9%にとどまります。中央で長く使われた馬ほど、地方での初戦は走りやすい傾向です。
興味深いのは、中央未勝利の馬でも勝率20.3%あることです(中央で勝利のある馬は22.6%)。
地方のクラス編入(格付け)は中央での実績を踏まえて決まるのが一般的で、未勝利組も相応のクラスからスタートできます。今回の結果は、その仕組みと整合するものと考えられます。
ブランク(中央最終出走からの間隔)では、2か月未満で転入してきた馬が勝率21.1%・単勝回収率77.0%と手堅い一方、4~8か月空いた馬は勝率18.3%・回収率49.1%まで落ちます。4~8か月のブランクを挟んだ転入馬は、初戦を割り引くのが無難です。
※8か月以上のブランク組は勝率24.5%と高めに出ていますが、該当719頭と少なく誤差の幅が大きいため、本記事では傾向として扱っていません。
場によって「通用度」がまるで違う

転入馬がどれだけ勝てるかは、行き先の競馬場で大きく変わります。
次のグラフは、場別の転入初戦の勝率です(300頭以上のデータがある12場)。
場別の転入初戦勝率

笠松28.2%・金沢27.8%・盛岡25.6%の3場では、3~4頭に1頭が初戦を勝つ計算です。
対照的に、大井14.6%・川崎15.4%は12場の中でも下位で、通用度が大きく下がります。ただし同じ南関東でも船橋は21.3%と中位にあり、「南関東だから通用しない」と一括りにはできません。
大井・川崎は地方の中でも賞金水準が高く、力のある馬が集まりやすいことが背景にあると考えられます。同じ南関東の船橋が中位にとどまる理由までは、本記事の集計からは分かりません。
大井の傾向は場別シリーズ第1弾でも詳しく検証しています。転入初戦については、大井・川崎は一段割り引いて見ておくとよいでしょう。
逆方向の現実——「地方の星」の中央挑戦

最後に、逆方向も見ておきます。地方から中央への挑戦です。
次のグラフは、直前走が地方だった馬の中央での勝率です。
地方からの中央挑戦の勝率

| 分類 | 出走数 | 勝率 | 3着内率 | 人気の中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 地方所属のまま中央挑戦 | 537 | 1.5% | 5.8% | 11番人気 |
| JRAへ移籍しての出走 | 3,318 | 2.7% | 7.5% | 12番人気 |
中央のダートのレース全体の平均勝率が7.1%ですから、どちらもその半分にも届きません。馬券購入者の評価も11~12番人気が中央値と厳しい水準ですが、単勝回収率は地方所属のままの挑戦で54.3%・JRAへ移籍しての出走で54.5%にとどまり、その評価すら上回れていません。
転入方向は初戦で「約2倍」、転出方向は中央での出走全体で「半分以下」です。測り方はそろっていませんが、どちらの向きでも同じ方向に大きな差が出ており、中央と地方の水準の違いが数字に表れていると言えます。
だからこそ、まれに中央で勝ち切る地方馬の挑戦は物語になるのです。
※この表は「直前走が地方」の中央出走すべての集計で、移籍後の初戦に限定したものではありません。
まとめ:転入馬の物差しを持って予想に活かす

本記事の検証結果をまとめます。
- 初転入馬の地方初戦は勝率20.7%(12,538頭の実測)で、地方全体の約2倍です
- ただし「転入馬」には交流参戦(JRA所属のまま)や出戻りが混ざりやすく、区別しないと数字が歪みます
- 強さは初戦限りではなく、2走目21.0%→10走目前後まで平均以上が続き、11走目以降は7.4%と平均を下回ります(走数を重ねた区分ほど顔ぶれが入れ替わる影響も含まれます)
- 回収率は2走目が65.8%と初戦より6%以上低く、「狙いは2戦目」説は、少なくとも馬券的には支持されません
- 中央で長く使われた馬は手堅く、4~8か月のブランクは割引材料です。大井・川崎では通用度が大きく下がります(同じ南関東でも船橋は中位です)
- 逆方向(地方→中央)は勝率1.5~2.7%と厳しく、水準の差は双方向の実測で同じ向きに出ています
実戦では、①その馬が「本当の初転入」か交流参戦かを確かめる、②転入から何走目かを数える、③行き先の場と中央キャリアで割り引く、という3点だけでも、転入馬の扱いはかなり整理できます。
回収率はどの区分でも100%未満です。転入は「買えば儲かる」印ではありません。
能力を評価するための物差しとしてご活用ください。
地方競馬全体の傾向(1番人気・枠順・脚質など)は、まとめ記事で一覧できます。
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